レインズとは?適正価格を見抜く3つの分析ポイント

2025.07.18
不動産基礎知識

「レインズ」という言葉を聞いたことはあるが、詳しくは知らないという方も多いだろう。
レインズは、不動産会社のみが利用できる情報ネットワークであり、物件の流通状況や価格の妥当性を把握する上で欠かせない仕組みである。
本記事では、レインズの基本的な仕組みや役割をわかりやすく解説し、適正価格を見抜くための3つの分析ポイント「過去の成約データ」「検索条件による絞り込み」「透明性のある取引履歴」を紹介する。
売買を検討している方はもちろん、将来的に不動産投資を視野に入れている方にも有益な内容となっているので是非最後まで読んで頂きたい。

レインズとは何かを基本からわかりやすく解説

レインズ(REINS)とは Real Estate Information Network Systemの頭文字を並べた名称で、不動産情報を扱うためのネットワークシステムのことだ。
国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営し、不動産業界の基盤となるシステム。全国の不動産会社が売却・賃貸に関する物件情報を登録・検索できるネットワークであり、不動産取引の透明性と効率性を高めるための制度として機能している。

レインズの情報は一般消費者には公開されていないが、正しく理解することで、市場価格の目安や不動産会社の対応力を見極める材料になる。不動産購入や売却を検討している人にとって、知っておくべき基礎知識の一つの知識だ。

レインズの正式名称と運営目的

レインズの正式名称は「不動産流通標準情報システム」である。このシステムは、国土交通大臣から指定を受けた「指定流通機構」によって運営されている。
主な目的は、売買や賃貸の物件情報を全国規模で集約・提供し、不動産市場の健全な発展と取引の円滑化を図ることである。情報の集中と標準化により、物件の重複掲載や情報の非対称性を防ぎ、取引の公平性を高めている。

不動産業者のみがアクセス可能な理由

レインズは、宅地建物取引業者(宅建業者)のみが利用可能なクローズドなシステムである。その理由は、レインズ内に登録される情報が、法的義務に基づいた信頼性の高いデータだからだ。
一般の消費者がアクセスできないことで、誤った解釈や価格交渉上の混乱を避ける狙いもある。情報の精度と取引の安全性を担保するため、利用者は国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者に限られている。

全国4つの地域に分かれた運営体制

レインズは、日本全国を4つのエリアに分け、それぞれの地域を担当する不動産流通機構によって運営・管理されている。この体制は、地域ごとの市場特性にきめ細かく対応することを目的とする。具体的な運営組織は以下の通りだ。

東日本不動産流通機構(東日本レインズ): 北海道、東北6県、北関東3県、首都圏1都3県、甲信越3県の17都道県
中部圏不動産流通機構(中部レインズ): 富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿圏不動産流通機構(近畿レインズ): 近畿地方
西日本不動産流通機構(西日本レインズ): 中国、四国、九州、沖縄

これら4つの機構はそれぞれ独立して運営されているが、システムは相互に連携している。これにより、例えば東京の不動産会社が九州の物件情報を検索するなど、全国規模での物件探しが可能となっている。

レインズマークの意味と重要性

レインズマークは、物件が指定流通機構に登録されていることを示す証明である。これは媒介契約を締結し、所定の手続きを経た物件に対して、不動産会社が広告やチラシに表示できるマークである。

このマークがあることで、物件情報の正確性や公開性が確認でき、取引の信頼性が高まる。買主や借主は、情報が裏付けられた物件として安心して検討できるため、選定時の判断材料としても有効である。

レインズが不動産取引にもたらすメリット

レインズの導入により、不動産取引の透明性と効率性が大きく向上している。物件情報の一元管理や成約履歴の共有により、価格の妥当性や取引スピードが担保され、売主・買主双方にとって有利な環境が整っている。

従来の属人的な情報管理から脱却し、標準化されたデータベースによって公正な取引が可能となった点は、不動産業界における大きな進化である。

物件売買のスピード向上

レインズを活用することで、物件情報が全国の不動産会社に即時共有される。その結果、買い手が見つかるまでの期間が短縮され、売却活動のスピードが格段に上がる。

特に専任媒介契約や専属専任媒介契約では、契約から7日以内の登録が義務づけられているため、登録と同時に多数の業者へ一斉に情報が伝わる仕組みになっている。情報の出回りが早いことで、買主とのマッチング機会が広がり、早期の成約につながる可能性が高まる。

過去の成約データから適正価格を判断

レインズには、過去の売買成約価格や物件情報が蓄積されている。これにより、同様の立地・間取り・築年数の物件と比較して、現在の売却希望価格が相場に合っているかを客観的に判断できる。

不動産会社はこの成約データをもとに査定を行い、価格の根拠を提示することが可能である。売主にとっても根拠ある価格設定ができ、過大評価による売れ残りリスクや、過小評価による損失を回避する判断材料となる。
ここにリンクなお、収益物件の適正価格を見極める具体的な査定方法は、こちらの解説ページも参考にして頂きたい。
アパート、収益物件の査定方法3種類について徹底解説します

物件検索の効率化と条件絞り込み

レインズのシステムでは、地域・面積・価格帯・構造など多様な条件での検索が可能である。不動産会社は顧客の希望条件に沿って絞り込んだ上で、該当する物件をスピーディーに提示できる。

これにより、購入希望者とのミスマッチが減り、効率的な営業活動が実現されている。また、登録された情報が統一フォーマットで表示されるため、比較検討がしやすく、物件選定の判断材料としても有効である。

透明性の高い安全な取引環境

レインズの導入により、物件情報の登録義務や履歴管理が明確化され、不正行為の抑止につながっている。たとえば、囲い込みなどの情報操作が行われにくくなり、消費者にとっても安心感のある取引環境が構築されている。

取引履歴が残ることで、不動産会社も責任ある行動が求められ、業界全体の健全性が高まっている。公正な情報共有が行われることで、買主・売主双方が納得できる契約を結びやすくなる。

レインズへの物件登録の流れと確認方法

契約の種類

レインズへの登録義務

業務状況の報告義務

専属専任媒介契約 契約日から5日以内 1週間に1回以上
専任媒介契約 契約日から7日以内 2週間に1回以上
一般媒介契約 義務なし(任意) 義務なし

レインズへの登録は、不動産取引における情報公開と流通の透明性を確保するために行われる。不動産会社が専属専任・専任媒介契約を締結した時点で、物件情報を所定の期間内にレインズに登録する義務が発生する。

登録後は証明書の発行や専用画面での確認も可能であり、売主は登録状況を客観的に把握できる。不動産会社に任せきりにせず、登録義務や手順を理解しておくことが、トラブル防止につながる。

媒介契約による登録義務の違い

媒介契約には3つの種類があり、それぞれレインズへの登録義務が異なる。専属専任媒介契約の場合は契約締結日から5営業日以内、専任媒介契約は7営業日以内の登録が法律で義務づけられている。

一方、一般媒介契約には登録義務はない。ただし任意で登録されることもあるため、契約時に確認が必要だ。登録義務の有無を理解することが、正確な情報管理と円滑な取引に直結する。媒介契約の選び方についてはこちらの記事を参照頂きたい。
媒介契約はどれがいいか?わかりやすく徹底解説します。

不動産会社への登録依頼のポイント

媒介契約を締結した後は、不動産会社が適切にレインズへ登録しているか確認することが重要である。登録の証明として媒介契約を結んだ場合、不動産会社は、売主に対して登録証明書を交付する義務がある。
不動産会社の対応が不透明な場合は、契約前に登録の方針やタイミングを明示してもらうことが望ましい。登録の有無は情報の拡散や成約スピードにも影響するため、軽視すべきではない。

不動産登録証明書

参照:公益財団法人 東日本不動産流通機構 

登録証明書の受け取りと活用法

登録証明書には、登録日や物件情報の概要などが記載されており、情報が適切に登録されたことを確認できる。
証明書は書面またはPDFで受け取ることが可能であり、他の媒介契約者や関係者との情報共有にも活用できる。証明の保管により、万が一のトラブル時にも冷静な対応が可能となる。

売主専用画面での登録状況チェック

専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した売主には、レインズの「売主専用画面」へのアクセス権が提供される。
この画面では、物件が実際にレインズへ登録されているかを確認できるだけでなく、登録日や公開状況、アクセス履歴なども閲覧可能である。不動産会社の説明と実際の登録状況に相違がないかを売主自身が確認できるため、透明性の高い取引環境が保たれる。

参照:国土交通省

国土交通省不動産・建設経済局不動産業課

参照:国土交通省不動産・建設経済局不動産業課

一般の方が利用可能なレインズ関連サービス

レインズは本来、不動産業者専用のネットワークであるが、一般消費者も利用できる関連サービスが存在する。

代表的なものにReins Market Informationレインズマーケットインフォメーション」があり、誰でも無料でアクセスできる。
このサイトを活用すれば、不動産取引の実例や市場の動きを知る手がかりが得られる。売却や購入を検討する際、相場感を把握し、判断の精度を高める材料として活用する価値は大きい。

レインズマーケットインフォメーションの概要

レインズマーケットインフォメーションの概要

参照:REINS Market Information

「レインズマーケットインフォメーション」は、指定流通機構が一般公開している情報サービスだ。このサイトでは、過去の不動産取引に関する概要情報を地域や物件種別ごとに検索することができる。

具体的には、所在地や面積、築年数、取引価格などが閲覧可能である。個人情報や物件の特定につながる要素は省かれているため、安心して参照できる。情報の信頼性が高く、相場把握の資料として有効だ。

過去の取引価格データの検索方法

レインズマーケットインフォメーションのサイトでは、直感的な操作で過去の取引価格を検索できる。具体的な検索手順は以下の通りだ。

●公式サイトにアクセスし、「マンション」または「戸建」のどちらかを選択する。
●物件の所在地を「都道府県」「市区町村」「地域(地名)」の順で絞り込む。
●より詳細な情報を得るため、最寄り駅や駅からの距離、専有面積、築年数、間取りなどの条件を指定する。
●検索を実行すると、指定した条件に合致する過去の成約事例がグラフや一覧形式で表示される。

グラフ表示では価格帯や㎡単価の分布が、一覧表示では個々の取引の成約時期や築年数などの詳細が確認可能だ。このプロセスを通じて、検討エリアの具体的な相場観を簡単に把握できる。

検討エリアの具体的な相場観

検討エリアの具体的な相場観

参照:rainsMarketInformation

市場動向の把握と売却・購入判断への活用

取引データを分析することで、検討エリアの価格相場と市場トレンドを把握できる。同じ築年数・面積の物件価格を比較し、平均価格や価格幅を確認することが重要だ。月別の成約件数推移から需要の変化も読み取れる。

投資物件を検討する際は、類似物件の成約価格を基準に収益性を計算し、購入価格の妥当性を判断できる。ただし表示される価格は成約価格であり、売り出し価格とは異なる点に注意が必要だ。

レインズで注意すべき囲い込み問題

レインズに登録された物件でも、一部の不動産会社による囲い込みが発生する場合がある。囲い込みは売主の利益を損なう違法行為であり、売却機会の損失や価格下落の原因となる。適切な対策を講じることで、このような問題を回避できる。

囲い込みが発生する仕組み

囲い込みは、売主から売却依頼を受けた不動産会社が、他社からの問い合わせを意図的に断る行為だ。レインズに物件登録はするものの「商談中」「売主都合により案内不可」などの虚偽理由で他社の客を排除する。

これにより自社で買主を見つけて売主・買主双方から仲介手数料を得る両手取引を狙う。宅建業法に違反する行為であり、売主にとって最適な売却条件を逃す原因となる

物件情報の非公開による売却機会の損失

囲い込みが発生すると、本来であれば成約につながる可能性のある買主候補を排除してしまう。競争原理が働かないため、適正な市場価格での売却が困難になる

売却期間が長期化し、最終的に相場より安い価格で妥協せざるを得ない状況に追い込まれる。特に人気エリアの物件では、複数の買主が競合することで価格上昇が期待できるが、囲い込みによりその機会を失う。

囲い込みを防ぐための対策

囲い込みを防ぐには、まず一般媒介契約を選択して複数の不動産会社に依頼する方法がある。専任系契約を結ぶ場合は、定期的な販売活動報告を求め、他社からの問い合わせ状況を確認することが重要だ。

売主専用画面での問い合わせ件数をチェックし、極端に少ない場合は囲い込みの可能性を疑おう。不動産会社の選定時には、レインズマークの有無や過去の実績、口コミを確認して信頼性の高い会社を選ぶことが対策となる。その他囲い込み対策についてはこちらの記事を参照頂きたい。
不動産囲い込み対策の対策とは?

不動産投資家のレインズ活用術

不動産投資において、レインズは市場分析と投資判断の重要な情報源となる。レインズマーケットインフォメーションを活用することで、投資家は客観的なデータに基づいた物件選定が可能となり、投資リスクを大幅に軽減できる。

特に投資用物件の価格妥当性判断や市場動向の把握において、レインズから得られる成約データは投資成功の鍵を握る。

投資用物件の市場分析での活用

投資物件の市場分析では、レインズマーケットインフォメーションの成約データを活用して、対象エリアの価格動向を把握する必要がある。過去1年間の成約価格推移を確認することで、そのエリアが値上がり傾向にあるか、安定しているかを判断できる。

また、同一マンション内での過去の成約事例があれば、階数や方角による価格差も分析可能だ。さらに、賃貸需要の高いエリアでは、成約件数の多さから流動性の高さも確認できる。

収益物件の価格妥当性の判断

収益物件の価格妥当性を判断する際は、レインズの成約データと想定利回りを組み合わせて分析する。同一エリアの類似物件の成約価格を基準として、対象物件の価格が適正範囲内にあるかを確認する

例えば、周辺の1Rマンションの成約価格が1,500万円程度であれば、2,000万円で提示された物件は割高と判断できる。また、成約までの期間データから、その価格帯での売却しやすさも予測可能だ。

投資判断に必要な情報収集のコツ

効果的な投資判断のためには、レインズデータを多角的に分析することが重要だ。まず、対象物件の築年数や専有面積と類似した物件の成約データを複数抽出し、価格のばらつきを確認する。

次に、成約時期による価格変動を分析し、市場の季節性や経済情勢による影響を把握する。さらに、駅距離や階数などの条件別に成約価格を比較することで、投資物件の付加価値要素を定量的に評価できる。

まとめ|レインズを理解して不動産取引を成功させよう

レインズは不動産業界の情報共有システムであり、適正価格の判断や市場分析に欠かせないツールだ。

一般の方でもレインズマーケットインフォメーションを活用することで、過去の成約データから物件の相場を把握できる。特に不動産投資を検討している方は、投資判断の精度向上に大きく役立つだろう。

ただし、囲い込み問題には注意が必要で、信頼できる不動産会社選びが重要になる。レインズの仕組みを正しく理解し、客観的なデータに基づいた判断を心がけることで、不動産取引での失敗リスクを大幅に軽減できる。
まずはレインズマーケットインフォメーションで気になるエリアの相場を調べてみよう。

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