媒介契約はどれがいいか?わかりやすく徹底解説します

2025.07.23
不動産基礎知識

不動産を売却する際、若しくは購入する際に不動産会社に物件を売ってもらったり、購入する物件を探してもらう際に締結する契約を媒介契約と言う。
不動産会社は依頼者と媒介契約を締結した時は、遅滞なく、媒介契約書(34条書面)を作成、記名押印し依頼者に交付しなけばならない。

媒介契約書に記載する内容は主に下記内容だ。

●物件の所在地
●価格(不動産会社は価格の根拠を示す必要がある)
●媒介契約の種類
●レインズ登録の有無
●報酬(仲介手数料)
●建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項

媒介契約書は国交省が定めた標準的な雛形(標準媒介契約約款)があるため参照頂きたい。必ずしもこれを使う必要は無いが国交省が推奨しているため、利用している不動産会社は多い。

標準媒介契約約款

宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款

記事の執筆者

媒介契約の種類について

媒介契約には一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がある。それぞれの違いは下記表を参照頂きたい。

種類 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約
自己発見取引 できる できる できない
依頼できる会社の数 上限なし 1社限定 1社限定
売主への報告義務 なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上
レインズ登録義務 なし あり あり
契約期間 規定なし 3ヶ月迄 3ヶ月迄
自動更新 OK NG NG

一般媒介契約の特徴とは?

一般媒介契約とその他2つの契約との大きな違いは「依頼できる会社の数」と「レインズ登録義務」となる。一般媒介の場合は複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができ、気になる不動産会社が複数あれば同時に売却活動を依頼することができる。また、レインズへ物件を登録する必要がなく、契約期間の定めは特にないが通常は3ヶ月が標準となる。仮にその期間に売却が決まらなくても売買契約の自動更新は可能となる。
レインズについてはこちらの記事を参照頂きたい

明示型と非明示型について

一般媒介契約は依頼できる不動産会社の数に制限が無いが、明示型と非明示型というものがある。明示型とは媒介契約を結んだ業者がほかにもいればその情報を契約書に明示しなければならない。また非明示型とはその明示が不要となる。非明示型の一般媒介契約は売主にとって最も行動の自由度が高い媒介契約と言える。

専任媒介契約(専属)について詳細解説

続いて専任媒介契約と専属専任媒介契約について。一般媒介との大きな違いは依頼できる会社が1社のみという点。他に気になる会社があったとしても、既に専任媒介若しくは専属専任媒介契約をしている会社があると、媒介契約を結ぶことができない。
またレインズへの物件掲載が必須という点も特徴だ。物件情報が公開され、どの不動産会社でも物件情報を紹介できるようになる。契約期間は3ヶ月迄であり、自動更新することはできない。更新する場合は再度媒介契約を締結する必要がある。
また専属専任の場合は自己発見取引(売主が自ら買い手を見つけて契約すること)ができないという点も重要となる。自己発見取引についてはこちらの記事を参照頂きたい。
自己発見取引とは?リスクやメリットもわかりやすく解説します

複数の会社と契約できるのは売却に有利か?

複数の会社と媒介契約を結べることは、売り手にとっては色々な会社を選べるという意味で都合が良い。また複数社を競わせることで、売却活動も頑張って貰えると思うのが通常だろう。しかし売却の依頼を受ける不動産会社側の認識は異なる。
仲介手数料は成果報酬のため、売買が成立しない限り売上は発生しない。そのような状況で複数社と媒介契約を結ばれてしまうと、売買成約の確率が低くなるため、不動産会社としてはやる気が無くなってしまうのである。
よって、一般媒介の場合は安易に複数の会社と媒介契約を締結するのは得策では無いことは知っておこう。
一方、専任、専属の場合は1社限定のため、そのようなことは無いが、逆に安心をしてしまい、買い手探しは客付けの仲介にお任せして、自社ではほとんど売却活動は行わないことも有り得るのだ。専任、専属で依頼する場合は、売却を依頼した会社がしっかりと売却活動をしているのかをチェックする必要があるだろう。

一般媒介契約

レインズに掲載するのは売却に有利か?

レインズに物件を登録すると、他の不動産会社がその物件情報を取得して紹介することができるようになる。よって物件情報が拡散され、より良い条件で物件を購入してくれる買主が見つかる可能性が高くなる。というのが一般的な解釈だ。しかし、実際にはそう上手くは進まないケースも多い。
不動産業界には公開物件と未公開物件というものがある。一般的にはレインズやポータルサイトに掲載されている物件は誰でも情報を入手できるため公開物件とされている。
一方、非公開物件はポータルサイトはもちろん、レインズにも登録されていない。物件情報は不動産業者間のみでやりとりされ、ネット検索では出てくることは無い。特に高価格帯の不動産や収益物件に関しては非公開で取り扱われることが多く、希少価値が高い物件として認識されている。
目の肥えた買主は公開物件を嫌う傾向にあり、「非公開物件しか検討しません」という方がいるほど非公開物件は一部の買主には人気がある。
よって物件の種類によっては、レインズに掲載したからといって必ずしも売れやすくなるというわけでは無いということは理解しておこう。
公開物件と非公開物件に関しては別記事でも詳細を解説しているので参考にして頂きたい。
未公開物件の探し方と公開物件との違いとは?

未公開物件の探し方と公開物件との違いとは?

仲介手数料はいくらになるのか?

仲介手数料については宅建業法上で上限が定められており、その数値以下であればどのような価格でも問題がない。
仲介手数料の料率は下記となる。仲介手数料は物件の価格帯によって料率が変わり複雑になるため、速算法として下記の方法で計算するのが一般的だ。

取引額が 200万円以下の場合 取引額×5% +消費税
200万円〜400万円の場合 取引額×4%+2万円
400万円超えの場合 取引額×3%+6万円

<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ(国土交通省)参照

例えば5,000万円の物件を売却した場合は(5,000万円×3%+6万円)+消費税という計算で、171.6万円の仲介手数料の支払いが発生する。これは最大値のため交渉によっては手数料を下げることは可能だ。しかし、手数料無料を謳う不動産会社の場合は逆に売主にとってデメリットになるので避けたほうが良いだろう詳細は下記記事を参照頂きたい。
仲介手数料無料のからくりとデメリットとは?

実際に媒介契約はどれがいいか?

各媒介契約の特徴を解説したが、では実際にどの媒介契約がいいのか?結論としては、物件の種類、売却までの期間、売却条件への固執の3点によって決めるのが良い。というのが筆者の見解だ。

物件の種類による違いについて

不動産は大枠では実需不動産と収益不動産に分けることができる。実需不動産とは通常の居住用の不動産のことで、買主が住むために購入する物件のことを言い、収益不動産は投資用マンションなどの事業用(投資用)の不動産のことを言う。
両者は同じ不動産だが、買い手の目的が全く異なる。前者は自分が住むための物件となるため、価格ももちろん重要ではあるが、それ以外の要素、デザイン、立地を重視する方も多い。公開、非公開問わずに検討してくれる特徴がある。
一方、後者は目的が事業であるため、最も優先するのは事業性、つまり購入価格だ。安く購入したいと誰もが考えているのである。そのような相場よりも安く購入できる物件は非公開で取引されることが多く、慣れた購入者は非公開物件しか検討しないという人も多い。
ここでのポイントは非公開物件は全てが相場よりも安いというわけではなく、非公開=希少性が高い、と認識されている。つまり非公開というだけで検討してしてもらいやすくなる傾向があるということだ。
通常の実需不動産であれば、レインズに登録して公開物件となっても、大きな障害は無いが、収益不動産の場合はレインズに登録して公開物件となった途端に検討してもらえなくなる可能性があるということになる。
よって実需不動産に関してはレインズ登録が義務化されている専任、専属でも良いが、収益不動産に関しては、レインズ登録が必須でない一般媒介というのがベストな選択となる。詳細はこちらの記事にて解説をしているので参照頂きたい。
収益不動産の媒介契約はどれがいいのか?

実需不動産と収益不動産

実需不動産での注意点とは

実需不動産でも注意点がいくつかある。たとえば金額帯が大きい高級物件(金額2億円以上)に関しては非公開の方が売れやすいこともある。
特に都心部のタワマンや購入戸建てなどが該当する。例えばレインズで東京都港区で物件を検索してもほとんど物件は出てこない。これは物件が流通しないということではなく、そのほとんどは非公開で取引をされているということなのだ。
また自宅や所有している不動産を売却していることをご近所や親族に知られたくないという場合も非公開での売却が良いだろう。レインズに公開をしてしまうと、詳細情報を掲載しなくとも、物件が特定され売却情報が拡散されてしまう可能性があるからだ。
よってこのような場合は一般媒介による非公開売却も検討しよう。

売却までの期間による違いについて

不動産を直ぐにでも売却して現金化したいという方と、特に急いでいないから良い条件で買ってくれる人がいれば売っても良いという方では結ぶべき媒介契約は異なる。
前者の場合は、前述した非公開での売却だと、どうしても情報の拡散が弱いため、早期売却には向いていない。逆に後者の場合は物件の希少性を落とすこと無く、物件を求める方にのみ物件情報を伝えることができるため、非公開が向いているだろう。
また、一般媒介はレインズ掲載はどちらでも良いので、公開でも非公開でも可能だが、専任、専属の場合はレインズ掲載が必須のため公開のみとなる。

売却条件への固執による違いについて

売却金額やその他の契約条件についてどうしても変更をしたく無いという方は、売却期間が長期化する可能性が高い。専任、専属の場合は長くても契約期間が3ヶ月となってしまう。更新することも可能だが自動更新はできないため、また同じ契約を巻き直す必要がある。また、専属の場合は自己発見取引といって売主自身が買い手を見つけ、契約する行為も禁止されている。レインズやポータルサイトに掲載して一気に情報を拡散するよりかは、最初の数ヶ月は非公開として徐々に公開していくのが理想的な方法だ。そうなると融通のきく一般媒介契約が適正となる。

専任媒介契約は本当におすすめなのか?

不動産会社のHPやメディアでは専任媒介契約がおすすめという記事を多くみかけるが本当にそうだろうか?専任は1社に任せるため、担当営業マンが頑張ってくれるという理由によるものだがそれは会社によるというのが実情だろう。
前述した通り、専任や専属は売主からは必ず手数料を貰えるという安心感がある。またレンズに掲載をしていれば、自ら動かなくても他の不動産会社が買い手を見つけてくれる。専任媒介契約を結んだ後はレインズに掲載をするだけで、その後は一切売却活動を行わない不動産会社は意外と多い。よって、必ずしも一般的な解釈が正しいというわけでないことを理解しよう。

まとめ

媒介契約には3種類がありそれぞれ特徴がある。専属専任は売主が自ら買主を探すことができない。規制が多く選ばれることが少ないため、基本的には一般か専任かどちらかを選択する形になる。

●物件種類(実需不動産оr収益不動産)
●売却期間(短期оr長期)
●条件への固執(変えても良いоr絶対に変えた無くない)

上記を踏まえて判断するのが筆者の見解だ。実需不動産であれば「専任」、収益不動産であれば「一般」、短期売却であれば「専任か一般」、長期であれば「一般」、条件を変えても良いのであれば「専任か一般」、変えたく無いのであれば「一般」となる。
いずれにしても、公開か非公開か、一般の場合でも何社に依頼するかも重要なポイントだ。
不動産は個別性の強い商品であるため、物件や売却理由、条件によって適した媒介契約は異なるということは理解しておこう。
当社では売主ファーストを掲げ、売主の状況に合わせて適切な媒介契約を結ばせて頂いている。媒介契約についてお悩みがあればぜひ問い合わせ頂きたい。

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